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幻水5はネタバレしてます  byぷり
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昨日、ドラートからやりなおしたのには、ちょっとしたワケがある。

そのワケをお話しよう。

と思ったが。めんどくさいのでやめた。

オイ!

いやいや……、うまく云えないので、またしても小話にしました。

以下、リヒャの過去とか、重いのとか嫌いな人は、まわれ右。



「あのこと」

 ドラート戦で、ひと暴れして、城に戻ると、ヴィルヘルムがニヤニヤしながら云いやがった。
「女王騎士のミアキスって女の子が仲間になったらしいぜ、まったく、かわいい女の子がどんどん増えていきやがる、たまんねえなこの軍は」
「たまんねえのは、おめーの性格だ」
 まったくこの女好きだけはどうにかしてもらいてえもんだ。
 その時は、話はそれで打ち切りになって、その女王騎士のことなんざ、すぐに忘れちまった。
 噂を聞いたのは、二、三日してからだ。
「ゲオルグさんが……」
「まったく信じられないよな」
 ヴィルヘルムは、いつものように城内をうろつくので忙しく、リヒャルトといえば、王子の用事で出かけているので、久しぶりに一人でゆっくりと食堂でメシを食っているところに、そんな会話が耳に入ってきた。
 ゲオルグというのは、見たことがある。あまり城にゃいねえようだが、黒髪の眼帯の男だ。一目見ただけで、腕が立つとわかる。器もそれなりに大きそうだ。王子と一緒に追われてきたくだりも知っている。
 会話をしているのは、若い兵士たちだった。声をひそめているつもりらしいが、ヒソヒソ声ってのは、いやでも耳につく。聞くとはなしに聞いているうちに、俺はだんだん腹が立ってきた。
 話をしていた兵士たちに対してではない。リヒャルトやヴィルヘルムに対してだ。
 話の内容は、こうだった。
「ゲオルグが、陛下を殺したのは真実らしい」
 ミアキスという女王騎士が、それをしっかり目撃したというのだ。
 噂の真偽なぞ、どうでもいい。俺と違って、フラフラと歩き回り、城の中のくだらない噂を耳にしゃあ、俺のところに来て、話をするリヒャルトとヴィルヘルムが、今回のこの噂に関ししゃ、俺に一言も云わなかったことが腹立たしい。
 陛下といえば、王子の母親だ。その母親をゲオルグが殺した。
 親を殺された王子は、ゲオルグをどう思っているのか。
 いやなことを思い出さずにゃいられねえ話だ。
 俺は、額に手をやった。
 俺も、あのボケの親を殺している。
 その事についちゃ、ヴィルヘルムも知っている。だからヴィルヘルムは、この噂を俺の耳にわざわざ吹き込みにこなかったんだろう。まあ、あいつは大人だ、なにも考えちゃいないようで、深いところまで考えていることもある。時々、俺に妙に気をつかったりもする。俺としちゃあ、その気遣いが腹立たしいわけだが、一応あいつの方が年上だ、たまになら気を遣わせてやってもいい。
 それより、あのクソボケのガキまでが俺に気を遣ってるところが腹が立つ。
 なんで俺があいつに気を遣われなきゃなんねえんだ。
 チッと、思わず舌打ちした。
 そのまま席を立って、部屋に戻る。
 まっすぐに部屋に戻らずに、散歩でもしてくりゃ良かった、と思ったのは、少し経ってからだ。薄暗い部屋の中でひとりでいると、いらねえことばかり考えちまう。
 俺は、あいつが、どう思っているのか、はっきり聞いたことがない。
 あいつの親父をぶっ殺したことについてだ。
 あいつは、それをいったいどう思っているのか。
 俺を恨んでいるなら、ここまで俺を慕いはしねえだろう。昔は、慕っているふりをしているだけで、ホントは裏があるのかもしれねえ、と思っていたこともあったが、どうもそうじゃないらしい。あいつは、ホントに全身で俺に甘えてきやがる。どんなに怒鳴られてもぶたれてもなついてくるんで、俺はあいつの頭がおかしいんだと思うことにしたが、本当のところはわかっていねえ。
 俺は、それを考えないようにしただけだ。
 いつの間にか、俺らの間では、あいつの親父の話は口にしないということが、不文律になっていた。
 だけど、あのことは、俺らの心の根っこのあたりに、しっかりへばりくっついていやがる。
 それをわかっていながら、その話だけはきれいに避ける。白々しいと感じながらも、茶番のように「あのこと」だけは口にしない。
 気にしていないふりをして、しっかり気にしている証拠だ。俺も、あいつも。
 俺は、何度も舌打ちをし、飲みかけのワインの瓶に手を伸ばした。


 リヒャルトが帰って来たのは、夕方だった。ヴィルヘルムは、一度戻ってきたが、俺の機嫌が悪いを見て、逃げるようにまたどこかに行っちまった。
「ミューラーさん、ただいま」
 リヒャルトが、いつものように、ヘラヘラしながら俺に声をかけてくる。ひょっとして、こいつは、まだあの噂を知らないんじゃないだろうか。そう思ったが、すぐに考え直した。王子と行動を共にすることが多いこいつが、あの噂を耳にしていないわけがない。
「リヒャルト、座れ」
「はい? なんですか?」
 キョトンとして、あいつは俺の前にやってきて、椅子に腰掛けた。いつもと様子の違う俺を怪訝に思っているらしく、首を傾げている。
「おめー、あの噂、聞いたか?」
「どの噂ですか?」
「眼帯の男が、王子の母親を殺した話だ」
 ズバリと云ってやると、リヒャルトは急にソワソワして、あちこちをキョロキョロと見回した。
「え~、そんな話、ぜんぜん知りませんよ~」
 嘘をつくのがここまでヘタか奴は見たことがねえ。
「それで、王子の様子はどうなんだ?」
「え? いつもと変わりないですけど……」
「王子はなにか云っていたか、親を殺されたことについて」
 おまえは、どう思っているんだ? 親父を殺されたことを。
「まいったな……」
 リヒャルトはヘヘヘと笑って頭を掻いた。
「ボク、そーゆー話、苦手なんでー」
「答えろ」
 ハア、と諦めたようにため息をついて、俺から目をそらす。
「王子様はいつもと変わりないですよ」
「王子はゲオルグのことをどう思っているんだ?」
 おまえは、俺のことを本当はどう思っているんだ?
「知らないですよ、王子様はそういうことしゃべらないですし」
「なんでこの話を俺にしなかった」
 なんで、おまえはずっと「あの話」を俺にしなかった。
「えー、だって、それは……」
 リヒャルトは、席を立って逃げだしたい様子で、腰を浮かしかけた。
「俺に気を遣っているのか?」
 なぜ、おまえが俺に気を遣う? 親を殺されたのは、おまえの方だというのに?
「ミューラーさん、ボク、ハラペコで死にそうなんですけど……」
「ひとつぐらい、まともに答えてみねーか!」
 怒鳴ると、リヒャルトは首をすくめた。
 それから、視線を俺に据えた。
 じっと俺の瞳を見つめてくる。目をそらしたくなったのは、うかつにも俺の方だった。
「ミューラーさん」
 珍しく意志のある眼差しで、口調を強めやがった。
 一寸、俺は、こいつの口をふさぎたくなった。
 なんてこった、この期に及んで、臆病風に吹かれたのは、俺の方だってのか。自分で自分に腹が立つ。
 リヒャルトは云った。
「もしも、ゲオルグさんが、王子様のお母さんを殺したのが本当だとしたら」
 だとしたら?
「そうしなければならなかった理由があったんだと思います。だから、王子様はゲオルグさんのことを信じていると思います。そう信じるに足る絆がふたりにはあるんですよ、きっと」
 俺のしたことを、おまえはそう思っているのか。だからおまえは俺を信じているってのか?
 気が抜けた。
「リヒャルト……」
 俺は、ホッとして、うかつにもこいつに優しい言葉をかけそうになっちまった。途中で気がついて、声を荒立てた。
「だったら、最初からそう云え! もういい、早く、メシ食ってこい!」
「ハイッ!」
 やつは、嬉しそうに椅子から飛び降りて、部屋を出て行った。
 何年も、「あのこと」を話さなかったことが、急にアホらしくなってきた。
 俺は、さっき飲んじまったワインの代わりに、安い酒でも飲むことにした。きっと酒場にゃ、ヴィルヘルムがいて、相手をしてくれるだろう。
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