忍者ブログ
幻水5はネタバレしてます  byぷり
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
ブログ内検索
プロフィール
HN:
ぷり
性別:
女性
趣味:
手芸・ゲーム・お絵かき・カリグラフィー
自己紹介:
フリー素材のHPで幻想水滸伝5のアイコンを配布しています。
フリー
お天気情報
[64]  [63]  [62]  [61]  [60]  [59]  [58]  [57]  [56]  [55]  [54
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

また小話です。

ミューラーさんは絶対に優しい。
けど、絶対にあまのじゃく。
だよね、だよね。


「水の紋章」

 ヴィルヘルムがニヤけて、「たまには城内の散歩でもしろ。面白いことが見聞きできるかもしれねえぞ」と云うので、なるほどたまにはいいかと、散歩に出かけて、奴の云わんとしていたことがわかった。
 だいぶ女の数が増えている。奴のやる気も出るってもんだ。どんなやる気だか知らねえが。
「仕事ばかりしてねえで、たまには目の保養でもしてこい」と云いたかったんだろう。俺はてめえと違う、と何度云えば、あの男はわかるんだろうか。
 ため息をつき、それでも一応城の様子でも見ておくかと、歩いていると、前になかった所に、紋章師の店が出ていた。一目見るなり、この俺が驚いた。
「ブッ、なんだありゃ」
 裸の女が立っている。いや、チョロっとしたモンをつけてやがるが、あれじゃ裸も同然だ。ヴィルヘルムは、たぶんこの女を俺に見せたかったんだろう。あいつは、こんな時に俺が示す反応を見て、面白がるところがある。
 俺は、女に近づいた。
「おい、あんた」
「あら、いらっしゃい」
 女が微笑んだ。艶めかしいというのは、こういうことなんだろう。まったく目の毒だ。
「そんな格好してると、なんかめんどくさいことになんねーか。たとえば、うちの若いのがちょっかいをかけたり」
「アラ、ということは、アナタがリンドブルム傭兵旅団の福長さんね」
 ウフフ、と笑う。どうもこの女は得体が知れねえ。
「うちのが迷惑かけてなきゃいい。だが、もしもうちの奴らがなんかしやがった時にゃ云ってくれ。ガツンとかましておいてやる」
 まあ、ありがとう、と笑って、女は目を細めた。
「じゃあな」
 長居をする気にもなれず、踵を返そうとすると、今度は女の方から声をかけてきた。
「副長さん、額が空いてるわ」
「ハ?」
 問い返そうとして、すぐに意味がわかる。紋章師が云うからには、そういうことなんだろう。
「俺の額に紋章がつけられるのか?」
「自分で気がつかなかった?」
「いつの間に……」
 気づかなかった。俺の額にゃ紋章はつけられなかったはずだ。それがいつの間にか、つけられるようになっているとしたら、ここの王子さんに雇われて、戦っている間に、俺自身が成長したってことだろう。
「こいつはいい、じゃあ、新しい紋章でもつけてもらうとするか」
「なんの紋章を宿しましょうか?」
「水の紋章だ」
 女はほんの少し、目をすがめた。
「だいぶ相性のよくない紋章みたいよ」
 そりゃそうだろう、この俺が癒しの紋章なんぞ、自分で自分が滑稽に思えるぐらいだ。だが、水の紋章は、ずっとつけたいと思っていた。両手についている紋章をはずせば、つけられたが、両手の紋章は攻撃型のもので、戦場に出る身では、どうしてもはずすことはできなかったのだ。
「相性が悪かろうが、ちったあ使えるだろ」
「そう、必要な紋章なのね」
「頼む」
 女はそれ以上よけいな口は利かず、俺の額に水の紋章を宿してくれた。


 部屋に戻ったところに、ちょうどリヒャルトも戻ってきた。
 このボケは、頭のできはいまひとつなんだが、腕が立つものだから、重宝されて、王子に連れ回されることが多い。フィールドにもダンジョンにも、モンスターがうようよしているから、こういう戦闘型は、役に立つだろう。
 俺はすばやく、奴の身体を見回した。戦闘の数が多いぶん、怪我をしていることがあるからだ。
 今日は特にないらしい。
 まあ、モンスターごときが相手なら、心配はない。
 問題は、戦争の時だ。
 このガキは、戦場に出ると、形相が変わりやがる。どっかにスイッチが入ったみたいに、止められなくなる。
 鬼神と呼ばれる活躍を見せて、敵を倒すが、本物の神なわけじゃねえから、本人も怪我を負う。
 それだけなら普通だが、こいつの普通じゃないところは、アドレナリンが異常分泌されて、痛みを感じなくなり、自分の怪我に自分で気がつかないところだ。
 前には、それで死にそうな目にあった。本人が平気な顔をしているので、こっちも気づかないでいたら、失血で倒れやがった。調べると、背中にでかい傷があるのがわかって、手当が遅れていたら、間違いなく死んでいた。
 まったく呆れる。死にそうな怪我を負って、それに自分で気づかないなんて、どこまでボケた野郎なんだ。
 そんなことがあったものだから、俺は戦場からこいつが戻ってくると、いつも裸にして身体を調べなきゃならなかった。いつの間にか、それが俺の役目になっていた。
 だが、今度からは、もうそんなことはしなくて済む。なにしろ水の紋章を宿したんだからな。怪我してようとしてまいと、こいつが帰ってきたら、回復魔法をかければそれで終わりだ。
 思わず鼻歌が出そうになったところで、リヒャルトが俺の顔を覗き込んできた。
「ミューラーさん、ご機嫌ですね、なにかいいことあったんですか」
 くそ、まだ鼻歌は出してねえってのに、勘のいい奴だ。なんで俺の機嫌がわかるんだ。
「うるせえ」
 水の紋章は、断じてこいつのために宿したんじゃねえ。俺は自分のために宿したんだ。




--------------
ちゅかさー、
これで3本の小話を書いたわけだけど、
なんでいつもミューラーさんの一人称になっちゃうの?
私って、ミューラーさんにシンクロするタイプなの……?

ちがう……、ぜったいに違うはず……っ。(なぜ泣く、自分? いいやん、ミューラーさんでも)
PR
忍者ブログ [PR]