幻水5はネタバレしてます
byぷり
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「水の紋章」
ヴィルヘルムがニヤけて、「たまには城内の散歩でもしろ。面白いことが見聞きできるかもしれねえぞ」と云うので、なるほどたまにはいいかと、散歩に出かけて、奴の云わんとしていたことがわかった。
だいぶ女の数が増えている。奴のやる気も出るってもんだ。どんなやる気だか知らねえが。
「仕事ばかりしてねえで、たまには目の保養でもしてこい」と云いたかったんだろう。俺はてめえと違う、と何度云えば、あの男はわかるんだろうか。
ため息をつき、それでも一応城の様子でも見ておくかと、歩いていると、前になかった所に、紋章師の店が出ていた。一目見るなり、この俺が驚いた。
「ブッ、なんだありゃ」
裸の女が立っている。いや、チョロっとしたモンをつけてやがるが、あれじゃ裸も同然だ。ヴィルヘルムは、たぶんこの女を俺に見せたかったんだろう。あいつは、こんな時に俺が示す反応を見て、面白がるところがある。
俺は、女に近づいた。
「おい、あんた」
「あら、いらっしゃい」
女が微笑んだ。艶めかしいというのは、こういうことなんだろう。まったく目の毒だ。
「そんな格好してると、なんかめんどくさいことになんねーか。たとえば、うちの若いのがちょっかいをかけたり」
「アラ、ということは、アナタがリンドブルム傭兵旅団の福長さんね」
ウフフ、と笑う。どうもこの女は得体が知れねえ。
「うちのが迷惑かけてなきゃいい。だが、もしもうちの奴らがなんかしやがった時にゃ云ってくれ。ガツンとかましておいてやる」
まあ、ありがとう、と笑って、女は目を細めた。
「じゃあな」
長居をする気にもなれず、踵を返そうとすると、今度は女の方から声をかけてきた。
「副長さん、額が空いてるわ」
「ハ?」
問い返そうとして、すぐに意味がわかる。紋章師が云うからには、そういうことなんだろう。
「俺の額に紋章がつけられるのか?」
「自分で気がつかなかった?」
「いつの間に……」
気づかなかった。俺の額にゃ紋章はつけられなかったはずだ。それがいつの間にか、つけられるようになっているとしたら、ここの王子さんに雇われて、戦っている間に、俺自身が成長したってことだろう。
「こいつはいい、じゃあ、新しい紋章でもつけてもらうとするか」
「なんの紋章を宿しましょうか?」
「水の紋章だ」
女はほんの少し、目をすがめた。
「だいぶ相性のよくない紋章みたいよ」
そりゃそうだろう、この俺が癒しの紋章なんぞ、自分で自分が滑稽に思えるぐらいだ。だが、水の紋章は、ずっとつけたいと思っていた。両手についている紋章をはずせば、つけられたが、両手の紋章は攻撃型のもので、戦場に出る身では、どうしてもはずすことはできなかったのだ。
「相性が悪かろうが、ちったあ使えるだろ」
「そう、必要な紋章なのね」
「頼む」
女はそれ以上よけいな口は利かず、俺の額に水の紋章を宿してくれた。
部屋に戻ったところに、ちょうどリヒャルトも戻ってきた。
このボケは、頭のできはいまひとつなんだが、腕が立つものだから、重宝されて、王子に連れ回されることが多い。フィールドにもダンジョンにも、モンスターがうようよしているから、こういう戦闘型は、役に立つだろう。
俺はすばやく、奴の身体を見回した。戦闘の数が多いぶん、怪我をしていることがあるからだ。
今日は特にないらしい。
まあ、モンスターごときが相手なら、心配はない。
問題は、戦争の時だ。
このガキは、戦場に出ると、形相が変わりやがる。どっかにスイッチが入ったみたいに、止められなくなる。
鬼神と呼ばれる活躍を見せて、敵を倒すが、本物の神なわけじゃねえから、本人も怪我を負う。
それだけなら普通だが、こいつの普通じゃないところは、アドレナリンが異常分泌されて、痛みを感じなくなり、自分の怪我に自分で気がつかないところだ。
前には、それで死にそうな目にあった。本人が平気な顔をしているので、こっちも気づかないでいたら、失血で倒れやがった。調べると、背中にでかい傷があるのがわかって、手当が遅れていたら、間違いなく死んでいた。
まったく呆れる。死にそうな怪我を負って、それに自分で気づかないなんて、どこまでボケた野郎なんだ。
そんなことがあったものだから、俺は戦場からこいつが戻ってくると、いつも裸にして身体を調べなきゃならなかった。いつの間にか、それが俺の役目になっていた。
だが、今度からは、もうそんなことはしなくて済む。なにしろ水の紋章を宿したんだからな。怪我してようとしてまいと、こいつが帰ってきたら、回復魔法をかければそれで終わりだ。
思わず鼻歌が出そうになったところで、リヒャルトが俺の顔を覗き込んできた。
「ミューラーさん、ご機嫌ですね、なにかいいことあったんですか」
くそ、まだ鼻歌は出してねえってのに、勘のいい奴だ。なんで俺の機嫌がわかるんだ。
「うるせえ」
水の紋章は、断じてこいつのために宿したんじゃねえ。俺は自分のために宿したんだ。
--------------
ちゅかさー、
これで3本の小話を書いたわけだけど、
なんでいつもミューラーさんの一人称になっちゃうの?
私って、ミューラーさんにシンクロするタイプなの……?
ちがう……、ぜったいに違うはず……っ。(なぜ泣く、自分? いいやん、ミューラーさんでも)
ヴィルヘルムがニヤけて、「たまには城内の散歩でもしろ。面白いことが見聞きできるかもしれねえぞ」と云うので、なるほどたまにはいいかと、散歩に出かけて、奴の云わんとしていたことがわかった。
だいぶ女の数が増えている。奴のやる気も出るってもんだ。どんなやる気だか知らねえが。
「仕事ばかりしてねえで、たまには目の保養でもしてこい」と云いたかったんだろう。俺はてめえと違う、と何度云えば、あの男はわかるんだろうか。
ため息をつき、それでも一応城の様子でも見ておくかと、歩いていると、前になかった所に、紋章師の店が出ていた。一目見るなり、この俺が驚いた。
「ブッ、なんだありゃ」
裸の女が立っている。いや、チョロっとしたモンをつけてやがるが、あれじゃ裸も同然だ。ヴィルヘルムは、たぶんこの女を俺に見せたかったんだろう。あいつは、こんな時に俺が示す反応を見て、面白がるところがある。
俺は、女に近づいた。
「おい、あんた」
「あら、いらっしゃい」
女が微笑んだ。艶めかしいというのは、こういうことなんだろう。まったく目の毒だ。
「そんな格好してると、なんかめんどくさいことになんねーか。たとえば、うちの若いのがちょっかいをかけたり」
「アラ、ということは、アナタがリンドブルム傭兵旅団の福長さんね」
ウフフ、と笑う。どうもこの女は得体が知れねえ。
「うちのが迷惑かけてなきゃいい。だが、もしもうちの奴らがなんかしやがった時にゃ云ってくれ。ガツンとかましておいてやる」
まあ、ありがとう、と笑って、女は目を細めた。
「じゃあな」
長居をする気にもなれず、踵を返そうとすると、今度は女の方から声をかけてきた。
「副長さん、額が空いてるわ」
「ハ?」
問い返そうとして、すぐに意味がわかる。紋章師が云うからには、そういうことなんだろう。
「俺の額に紋章がつけられるのか?」
「自分で気がつかなかった?」
「いつの間に……」
気づかなかった。俺の額にゃ紋章はつけられなかったはずだ。それがいつの間にか、つけられるようになっているとしたら、ここの王子さんに雇われて、戦っている間に、俺自身が成長したってことだろう。
「こいつはいい、じゃあ、新しい紋章でもつけてもらうとするか」
「なんの紋章を宿しましょうか?」
「水の紋章だ」
女はほんの少し、目をすがめた。
「だいぶ相性のよくない紋章みたいよ」
そりゃそうだろう、この俺が癒しの紋章なんぞ、自分で自分が滑稽に思えるぐらいだ。だが、水の紋章は、ずっとつけたいと思っていた。両手についている紋章をはずせば、つけられたが、両手の紋章は攻撃型のもので、戦場に出る身では、どうしてもはずすことはできなかったのだ。
「相性が悪かろうが、ちったあ使えるだろ」
「そう、必要な紋章なのね」
「頼む」
女はそれ以上よけいな口は利かず、俺の額に水の紋章を宿してくれた。
部屋に戻ったところに、ちょうどリヒャルトも戻ってきた。
このボケは、頭のできはいまひとつなんだが、腕が立つものだから、重宝されて、王子に連れ回されることが多い。フィールドにもダンジョンにも、モンスターがうようよしているから、こういう戦闘型は、役に立つだろう。
俺はすばやく、奴の身体を見回した。戦闘の数が多いぶん、怪我をしていることがあるからだ。
今日は特にないらしい。
まあ、モンスターごときが相手なら、心配はない。
問題は、戦争の時だ。
このガキは、戦場に出ると、形相が変わりやがる。どっかにスイッチが入ったみたいに、止められなくなる。
鬼神と呼ばれる活躍を見せて、敵を倒すが、本物の神なわけじゃねえから、本人も怪我を負う。
それだけなら普通だが、こいつの普通じゃないところは、アドレナリンが異常分泌されて、痛みを感じなくなり、自分の怪我に自分で気がつかないところだ。
前には、それで死にそうな目にあった。本人が平気な顔をしているので、こっちも気づかないでいたら、失血で倒れやがった。調べると、背中にでかい傷があるのがわかって、手当が遅れていたら、間違いなく死んでいた。
まったく呆れる。死にそうな怪我を負って、それに自分で気づかないなんて、どこまでボケた野郎なんだ。
そんなことがあったものだから、俺は戦場からこいつが戻ってくると、いつも裸にして身体を調べなきゃならなかった。いつの間にか、それが俺の役目になっていた。
だが、今度からは、もうそんなことはしなくて済む。なにしろ水の紋章を宿したんだからな。怪我してようとしてまいと、こいつが帰ってきたら、回復魔法をかければそれで終わりだ。
思わず鼻歌が出そうになったところで、リヒャルトが俺の顔を覗き込んできた。
「ミューラーさん、ご機嫌ですね、なにかいいことあったんですか」
くそ、まだ鼻歌は出してねえってのに、勘のいい奴だ。なんで俺の機嫌がわかるんだ。
「うるせえ」
水の紋章は、断じてこいつのために宿したんじゃねえ。俺は自分のために宿したんだ。
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ちゅかさー、
これで3本の小話を書いたわけだけど、
なんでいつもミューラーさんの一人称になっちゃうの?
私って、ミューラーさんにシンクロするタイプなの……?
ちがう……、ぜったいに違うはず……っ。(なぜ泣く、自分? いいやん、ミューラーさんでも)
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